トトロの森の保全活動
所沢周辺から東京にかけて広がる「狭山丘陵(さやまきゅうりょう)」は、宮崎駿監督による人気アニメ映画「となりのトトロ」(制作・スタジオジブリ)の舞台とされている場所で、東西約 11キロ、南北約 4キロ、面積は約 3,500ヘクタールにおよんで武蔵野の里山の自然が残されています。なだらかな丘と谷地、湿地などで形成され、そこにはさまざまな野生動植物が生息しています。四季折々の美しい景色を見せる里山と麓に広がる田園風景は、自然と人がともに暮らしてきた昔ながらの日本の原風景でもあります。
しかし、この狭山丘陵は、昭和以降から始まった大規模な開発によって、失われつつあったのです。森は各所で宅地や施設などに次々に姿を変えていきました。そんな中、狭山丘陵の自然や美しい景色を守り、次世代に残そうと市民たちが集まり、1990年に「トトロのふるさと基金委員会」(当時)が設立。寄付金によって土地を買い取り保全する「ナショナル・トラスト運動」が始まりました。
無謀な挑戦と思われた運動でしたが、宮崎駿監督の賛同を得て「トトロ」がこの運動を後押ししました。その反響は絶大なものがあり、全国からたくさんの寄付金が集まり、翌年には最初の森を購入。その森は「トトロの森」と名づけられました。2011年には「公益財団法人トトロのふるさと基金」となり、多くの人たちの協力によって増えた森は、2016年 1月現在で36ヵ所におよんでいます。それでも、狭山丘陵全体のたった 0.2% にすぎず、開発計画は後を絶ちません。また、森を購入して終わりではなく、多くのボランティアとともに取得した森を維持管理しています。人の手が入らず荒れていた森が、里山としての森の手入れをすることによって、今では希少種となってしまった動植物が姿を見せるようになります。